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壁には「選抜試験」とだけ大きく書かれたものが貼られていた。
その下に、少女が座っている。
ついた机と椅子、そして衣装は古めかしく重厚で、薄暗く不釣り合いに広い部屋の中で、少女を更に小さく見せていた。
喚ばれて来たものの、どういった選抜試験なのか説明は無い。
「では、始めます」
鈴の音のような声で宣言すると、手にした書類に目をおとし、ゆっくり読み上げはじめる。
「試験は面接形式です。私の質問に答えていただきます。実際にスキルを見せていただく場合もありますが、決められた範囲から出た場合、失格となりますのでご注意ください」
その線を越えては駄目ですよ、と床の白い線を指す。机よりかなり手前だ。
「……これは」
「あ、もうちょっと説明がありますから、待ってくださいね」
今度は書類をなぞりながら早口で再開する。
「あなたのスキルで、私やこの会場、そして会場外に危害を及ぼした場合も失格です。質問は適宜受け付けますが、私自身に関する事や合格基準について、私が試験に不適切と判断した質問には答えません。以上です。ご質問はありますか?」
一仕事こなしたように大きく息をついた少女から、すり減り黒ずんだ床へ意識を戻す。粉を撒いたような幅広の白い線は、壁にあたって曲がり、ぐるりと四角を描いている。
少女とこちらを隔てるように。
「この部屋は、何で出来ている」
「うーん。何、とは答えにくいですけれど、簡単には壊れないものですよ」
笑えば少女は更に幼く見えた。
得体の知れない密室で、子供に『試験』される。何とばかばかしい。
「……いい、始めよう」
子供に付き合うのも、たまには良い。
「では簡単な質問から。今のお住まいはどこですか?」
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