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鷹と雛(三)[現在]
「髪さらさらね。結うのが難しいくらい」
「えと、あの……」
「一葉、髪飾り取って」
「はあい。どうぞ」
「明日はもう少し濃い色のお着物も試してみましょうよ。きっと似合うわ」
「う……」
助けを求めるようにこちらを見る雛に、菖蒲は思わず笑ってしまった。
屋敷に雛を連れ帰った菖蒲は、湯に入れて綺麗にしてやるようにと告げて小鳥たちに託した。しかし湯浴みさせるだけでは彼女たちの気が済まなかったらしい。頭のてっぺんから爪先まで磨き上げ、淡い桜色の着物に着替えさせ、今は髪を整えている。
「止めてきましょうか?」
燕の提案に、いや、と菖蒲は笑いながら答えた。
「いい。儂が行く」
雛を中心とした小鳥たちの輪へと近付いていき、菖蒲は誰にともなく声をかけた。
「楽しそうだな」
「菖蒲様。見て、『綺麗に』なったでしょう?」
「ああ」
手足の不健康な細さは変えようがないが、汚れた肌や髪が湯で洗い流され、花柄の着物を羽織ったことで、全体的に明るく愛らしい印象になった。
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