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「私がそちらへ行けばいいのか?」
「そうだな。まだ、あれを外に出すには早い」
あやかしを見る目を持った人間は、狙われやすい。人を襲うあやかしも随分減ってきたとは聞くが、それは「外」での話だ。「こちら側」にそのような人間がいれば、手に入れたいと思うものが出てきてもおかしくはない。
「柊、本当に引き受けるつもり?」
「ああ。学ぶべきことが同じであるならば、私にも利はある」
当初思っていたのとは違ったが、同様の結果が得られるならば多少の差違は気にするに及ばない。柊は週のうち何度か芹とともに学校に行く日があるとのことで、その日を避けて雛の相手をしてもらうことにした。
「人間の子どもなのだろう? あやかしを怖がったりはしないのか」
「その点は問題ない。あやかしよりも、人、しかも女が怖いそうだ」
「そうか、変わってるな」
確かに変わっている。だが、どこにでもいる普通の人間など、側に置いたところで何もおもしろくない。
「では、明日」
正午頃迎えを寄越すと約束し、菖蒲は二人に背を向けた。
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