毒にいちゃん

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「日向、中絶のやり方って知ってるか?」   部屋にこもっていた日向に向かって、大学から帰ってきた月翔は明日の天気を尋ねるような気楽な口調で言った。 「あの子中絶したそうだ。今なら火葬費用もかからないから、安く済むんだってよ。残酷だと思わないか、日向。勝手にセックスしてできた命を、医者が切り刻んで腹から摘まみだすんだぜ。仕事とはいえ人間のすることじゃないな」 「……最低」 「は? 何か言ったか?」 「にいちゃんは最低だって言ったんだ!」  日向は手元にあったスクールバッグを月翔に投げつけた。 「どうしてミサキちゃんを……っ! 僕の彼女に手を出したんだよ!」 「アレが俺の子かどうかなんて知らないさ。調べる必要もないしな」 「……にいちゃんの子じゃないの?」 「いや、俺のかもしれないし、お前のかもしれない。ミサキちゃん? だったっけ。あいつは何も話さないんだろ。それが答えじゃないのか?」 「じゃあ何で勝手に中絶なんてさせたんだ!」  ――僕の子供かもしれないのに。  口に出すのははばかられた。  残酷な現実の中で、その部分だけは信じたかった。  だが月翔は初めてミサキに会ったときのような精悍な顔で答えた。 「あの子にとって望まない妊娠だったからだよ。わかるだろう、日向」
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