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すると、どうしたことでしょう。
絶望的な状況なのに、わたしは勇気が湧きました。
「落ち着いて、もう平気よ……」
彼女をそっと抱きしめてーーこれが最後の抱擁になると覚悟した上で言いました。
「わたしが全部やってあげる」
……そうでした。そうなのでした。
(なにも心配することはない。これまで通り、やるだけだから)
これまでだって同様に、わたしはやってきたのです。
十代に、一度鏡子の元を離れて再び舞い戻って以来。鏡子に近づく悪い虫たちはみんなわたしが消してきました。
人殺しこそしなかったものの、かなり酷いことだってしました。
あるいは嘘の告白をして。あるいはわたしの身を売って。
目立たない陰として付き添って、今まで尽くしてきたのです。
(鏡子を輝かせるためならば、わたしはわたしの人生ひとつを棒に振っても構わない……)
そんな風に思ってきました。
だって鏡子は特別で。
だって鏡子はうつくしく。
とても、とても「弱い」のだから……。
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