1話 無視

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1話 無視

由衣は風呂上がりに疲れ切った体をベッドに横たえていた。 ドライヤーで髪を乾かすのも体が重い位で一度横たわったら中々起きれなかった。 時間は既に日付を跨いでいる。 明日も仕事が早いので、ダラダラせずにとっとと寝るに限る、と目を擦り起床時間をiPhoneに打ち込んでベッドに放り投げた。 「さぁー、寝ますかぁ!」 何とか体を再び起こして部屋の電気を消すと、布団を被る。 部屋の電気を消してウトウトとし始めた頃、無音の室内でカサカサと音がして眉を顰めながら目を開けた。 真っ暗闇の中でその音は微かに聞こえる。 小さな音だが一度気になると眠れない。 暗闇に慣れてきた目でキョロキョロと周囲を見渡したが至って部屋には何の変化もない。 一体何の音だろう。 どうやら自分のベッドの下から聴こえる気がする。 猫でも飼っていたなら、さてはベッドの下に隠れて悪戯でもしているのだろうと思った事だろう。 (やだ…虫かな……?) 由衣の一番苦手な、あの、黒光りする虫だったら……このまま無視を決め込んで寝るなんて事は、とても気持ちが落ち着かなくて出来無い。 かといってベッドにから降りて素早く電気をつける、なんて動きをして反射的にあの虫が飛び出してきたらどうしようと身震いした。 暗闇の中で、iPhoneを握ると小さなライトを付け、そっとベッドの下を覗き込んだ。 寝具の下の奥で、小学生位の女の子が正座し頭を床に付け、面を上げず揃えた両手の指をバラバラにカサカサと動かしていた。 由衣は、ベッドの上で震えながら無視を決め込んだ。 無視/終
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