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5話 留守番電話
――――午前0時、スマホの光が暗闇の中で点滅していた。
亜矢子は軽く仮眠を取るつもりだったが、どうやら体が疲れていたのかいつの間にかぐっすりと眠っていたようだ。
最近の残業で知らないうちにストレスと疲労が体に蓄積されていたのかも知れないと陽子は思った。
無意識に指先が、暗闇の中で留守電を再生してみる。
『陽子ちゃん? おばあちゃんよ、元気してる? あんた最近○□の本きちんと読んで道場に通ってるの? 神様は見てらっしゃるからね。そう言えばあんた、新しい彼氏が出来たみたいね、お母さんに聞いたわ。
でも遊んでばっかりいたら駄目よ、おかしな人も居るし気を付けてな。信用したら駄目よ。おばあちゃんは何時だってあんたの幸せを祈ってるのよ。あんたを愛してるんだから何時でも頼りなさい。○○神を頼りなさい。絶対に幸せになるからね』
途中で、再生ボタンを消した。最近、一週間に何度も祖母の留守番電話が入るがもう一ヶ月前に祖父を殺し、自殺している。
そして、留守番電話の再生を止めたにも関わらず、念仏のように暗闇の中で同じ言葉が何度も繰り返された。
鼻につくすえた腐臭、ボサボサの白髪にジャージ、座り込む黒い影。どろどろとした内臓の腐った吐息を自分の頭上から感じた。
何時になったら、私は祖母からから解放されるのだろう、今日もまた眠れない夜が続く。
留守番電話/終
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