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6話 視線の先
以前、友人Aからこんな話を聞いた。
「うちの母親の話なんだけどね、ここに引っ越して来る前は、踏切の近くに住んでいて」
Aは、中学の時にH市に引っ越しをしてきたが以前は、Bと言う所に住んでいた。Aは3人兄弟の長女で、少し年の離れた弟と妹が居る。
「弟が生まれて三歳にもなってない頃だから、私が小学生の頃かな。うちの母親が弟を寝かし付けて部屋でゴロンと寝転んで、昼寝してたんだよね。そしたら急に金縛りになったらしくて。そうだ、言い忘れたけど、家の近くの踏切って良く人が飛び込むのよね」
踏切の近くに住んでいて、人身事故で体の一部が飛んできてベランダに転がっていただの、庭に首が落ちていたなんて言う話は、怪談でもよく聞くし都市伝説でもある。人が良く飛び込む踏切と言うのは、現実に私が思っている以上にあるんだろうとは思っているのだが。
「暫く体が動かなくて、金縛りなんて科学的に証明出来るものが殆どで、うちの母も疲れが溜まってるんだわ……と思っていたの。
で、瞼だけは動かせるものだから目を開けたのよね。そしたら知らない男の首が目の前にあったんだって」
よもや、人身事故の被害者の首が居間まで転がり落ちてきたとは思えないが、その男の目には何が写っていたのか気になる。
命を絶つ前の人生か、死の世界か、友人の母か。個人的に一番最後が恐ろしいと思うが、それを確かめる術はもう無い。
視線の先/終
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