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8話 奇妙な既視感
これは中学生の頃、仲が良かったAとのお話し。
この友人Aと言うのは「視線の先」の話を私にしてくれた同一人物だ。
Aは私が中学生の頃に転校してきたのだが、幼い頃からずっと一緒だったんじゃないかと思うくらいに仲が良く無二の親友だった。趣味も一緒、笑いのツボも一緒、共に創作を作り上げるなど学生時代多くの時間を彼女と過ごした。
「私達、同性同士じゃなかったら結婚してたよね〜」
「わかるー、もしかしたら双子だったかもね」
こんな会話は一緒に過ごしていて日常茶飯事だったのだが、一つ彼女と合わない所があるとすれば、彼女は所謂人気者で私は何方かというと内向的な性格だった事だろうか。
それはさておき、この友人Aとのエピソードを紹介すると、今からAから電話がかかってくるな、と思えばその直後に電話が入ったり、互いに体調が悪い時は何と無くお互い健康であっても気分の悪さが感染したりする。
恐らく多くの人が親しい人同士の間で同じような経験をされた事があるのではないだろうかと思う。
ある日、夕方に二人で歩いているととある古めかしい洋館に差し掛かった。そこは何時も通っている場所では無かった筈だ。
その見慣れぬ洋館が夕方から夜に変わる逢魔が時にとてつもない既視感に襲われて立ち止まった。
既視感とは、実際は一度も体験したことがないのに、すでにどこかで体験したことのように感じる現象なのだが、暗い窓辺に金髪の双子の少女が虚ろな目で立ち尽くしていた。服は赤いワンピース。
この時間帯に少女がぼんやりと無言のまま立ち尽くしているという光景が頭に入ってきた。
「あのさぁ、A……今ね」
「わかる、双子の女の子が頭に浮かんだよね」
「今の一体なんだったんだろう」
二人共、その場立ち尽くして語り合った。全く同じ光景を頭に描いていたからだ。
私一人ならば、おかしな妄想た片付けられるが、Aも全く同じ光景を思い浮かべていた。一体今のは何だったんだろう、変なの前世の記憶かな?等とふざけあった。
しかし本当に双子だったんだね、等と言うような子供らしい解釈になればいいが、あの既視感から感じた感情はそんな可愛いものでは無かった。
「ここから出られない」
私が感じたのは、その言葉と重苦しい閉塞感、暗い部屋、絶望と切なさだ。
そしてこれはAには言わなかったのだが双子の少女達の背後、薄暗い部屋の中で顔な見えないボロボロの白いドレスを着た女が二人の肩を抱いきハサミを持っていた。
多分、Aも同じような既視感を抱いていたが私には言わなかったのでは無いか、と今になれば思う。
――――はたして、あの既視感はただの思春期の少女達が共有してしまった空想なのか、あの建物の記憶を見たのか、それとも。
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