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白いワンピースをふわっと広げてくるくるまわる。そうすると白い雪が舞い上がって女の人と一緒にダンスをしているみたい。気のせいかな。白く舞い上がる雪の粉がキラキラ光って、笑い声が聞こえてくる。
「もしかして妖精?」
初めて見た。初めて妖精の声を聞いた。キラキラ光る雪の粉は太陽の光にとけていく。どこへいっちゃたんだろう。さざめくような笑い声がすうっとひいて、僕のお母さんぐらい大きくなった女の人がにっこり笑って指さした。木の根元に何かある。何だろうとしゃがみこむと、僕は襟首をつかまれた。
「こらっ!そんな恰好で外にでたら、風邪ひくじゃないか!」
見上げるとおじいちゃんが笑いながら怒ってる。こういう時はすぐにわかる。おじいちゃん、面白がっているんだ。
「おじいちゃん、僕、妖精をみたんだよ。女の子がキレイな女の人になって、くるくる踊ったの」
僕は女の人がいた方を振り返ったけど誰もいなかった。妖精の笑い声もしなくなっていることに気がついて、僕は突然怖くなった。
「おじいちゃん、ウソじゃないよ。ウソじゃないよ。ちゃんとみたんだよ。春来るよって笑ったの」
慌てる僕ににやっと笑って、僕がしゃがみこんで見ていたものを指さした。白い雪をはねのけるように、黄色の花が咲いている。
「神さまが教えてくれたのかもしれんな。春がくるって」
「この花なんていうの?」
「フクジュソウ。ばあちゃんが好きな花だ」
それじゃあおばあちゃんにも見せてあげないと。大きなくしゃみをしたら、おじいちゃんに抱き上げられた。
「ちゃんと着替えをしないと、本当に風邪ひくぞ」
はいと返事をしてフクジュソウが咲いている方を見る。木と木の間であの女の人が、神様が躍っているような気がした。
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