24人が本棚に入れています
本棚に追加
滅する者
星屑を抱えた夜の空が不意に、少しだけ遠ざかって淡く滲んだ。
一度だけ強く瞬いた光の正体は、流れ星だった事にしておこう。
仰向けに倒れた青年は、徐々に狭くなる視界をゆっくりと左右に傾け、これから一体となるで有ろう自然の息吹きを、恨むようにもう一度網膜に焼き付ける。
青や赤色の苔に覆われた、湿り気の有る冷えた大地。
活発に蠢くのは節足動物達だ。
彼等の住みかと化した腐った大木からは純白色の茸が無造作に生え、躍動していた。
そして、岩石と見間違う程に巨大な傘を持つ朱色の茸が、辺りの森を侵食する様に犇めき、時折金色の胞子を飛ばしている。
(これが、見捨てられた人間の結末か。クソ……!)
大の字に倒れたまま、青年はとうとう悪態を付いた。
最後の力を振り絞るように首を持ち上げて爪先の方を見れば、変わり果て、横たわる己の肉体が有る。
両足は、内側から肉を破って吹き出した赤い茸の傘でビッシリと覆われて膨張し、左手は赤黒い茸に覆われて機能を失っていた。
顔の左半面は岩のように固い巨大な茸が支配し、残された右目も失明が近い。
もう殆ど感覚など通っていない肉体と、不意に混濁する己の意識。
ボロ切れのようになった衣類と内側からひしゃげた鎧。
最初のコメントを投稿しよう!