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目を覚ますと、そこは真っ白な空間だった。
視界の限り続く白、白、白。
見ていると遠近感が狂ってしまいそうな、ひたすら白い空間の中に自分は立っていた。
これが室内なのか、屋外なのかすら分からない。
ただ分かるのはここには白しかないということだけだ。
それでも何かないものかと、少しでも辺りを見回そうと体をひねってみると足下からチャプンと水音がした。
今まで気付かなかったが、自分は膝下くらいまで何か真っ白な液体に浸かっていたらしい。
しかし液体があるという事実に気付いてみても、不思議なことに自分の足が液体に浸っているという感覚らしい感覚がない。
そう言えば、自分が履いているズボンも服も見覚えのない真っ白なものだ。
いつの間に着替えたのだろうか……?
……というか、まず自分がここに来る前に何をしていたのか思い出そうとしても何も思い出せないことに気が付いた。
極めつけには自分の名前、住んでいた場所すら分からない。
慌てて何かしら思い出そうと必死に記憶を探ってみるが、何故か出てくるのはひたすら真っ白な画面ばかり……違う、そんなはずはないはずだ!!
何も思い出せないが、流石にそれがおかしいことだけは分かる……!!
思わず自分の頭を抑えようと、出しかけた自分の手を見てぎょっとして動きを止めた。
白い……手も腕も白い。
色白とかいうレベルじゃない、人間……いや、生き物の肌の色として不自然なレベルの真っ白さだ。
おかしい!! 何も思い出せないけど、自分の肌の色がこんなに作り物じみた不気味な白じゃなかったことだけは確信を持って言える!!
なんなんだ一体!? どうなっているんだ!!
こみ上げてくる不気味さと恐怖を振り払うように、顔を左右に振り。
一旦、落ち着こうと目を閉じた。
…………なんでだ?
なんで目を閉じたのに、目の前が変わらず真っ白なままなんだ!?
まさか……!?
まぶたの開き閉じを何回か繰り返して確信する。
まぶたの裏まで、この空間とそっくりな白色になっている……。
っ……!!
あまりにもおかしなことばかりで、自分は耐えきれずその場にへたり込んだ。その際に謎の白い液体に浸かってしまうことも気にせずに……。
はぁ…………。
少しでも気を紛らわすために、大きく息を付いた。
座ってみると、謎の液体は胸下くらいまでの深さになったが相変わらず浸かっている感覚はなかった。
もういい……しばらく何も考えなくない……。
…………しかし、ここまで病的に白い空間にいると勝手に頭の中まで白く塗りつぶされてゆく気がするな……。
…………いや、違う!! 感覚の問題じゃなく、本当に頭の中がドンドン白くされていっている!?
そんな……こんなの…………どうすれば………………。
………………………………。
………………………………………………………………。
……………………………………………………ああ……真っ白だ…………………………。
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