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靄は晴れた。
ランタンを下から覗いていた。目線をずらせばテントの入口が見える。起き上がろうとするが身体が言うことを聞かなかった。
入口の隙間から誰かが覗いていた。だが、それには目が付いていないようだった。自身の身体は眠っているにも関わらず、その姿を近くで確認できた。
身なりは見窄らしい。汚れた長い髪で目を隠す。年の頃は幼く、性は男のようだった。
心の臓は強く鼓動する。何の感情からかはわからない。
「・・・・ぁぐ、・・・・ぅご」
声は出てくれない。
その男児の精は葉瀬の上に乗り、呼吸を奪うように顔を覆う。
するとまた景色は戻った。目の前にはランタン。身体を起こし、葉瀬は叫んだ。
「阿尭っ、吽尭っ」
辺りを見渡すがテント内に何の不思議な様子は感じられない。
「夢・・」
疑問を覚えつつも外に出た。
「どうなさいました」
阿尭は大きな眼で葉瀬を見つめた。
「・・何も異変はないか」
「いえ・・。強いて言うなら葉瀬殿が我々を呼ぶ声が今聞こえたくらいでしょうか・・」
「・・そうか。
疲れからか、この地の物の怪の仕業か夢を見ていたようだ・・」
「夢と申しましても葉瀬殿がテントに入ったのはつい先程のことでございますよ。
さぞお疲れだったのでしょう」
「そうか・・。それほど短い時の間にこのような夢を見たとすれば何かの兆かもしれんな・・。
吉兆か、凶兆か・・」
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