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───気づけば世界が終わっていた。
何がどうなって、どうやってこうなったのかは皆目見当もつかない。不意打ちを食らったかのように呆気に取られ、意識を立て直した時にはすでに大惨事が起きていた。
綺麗な青空だったのに今は違う。地獄のような赤黒い色に染め上げられてしまっていて、本当に地獄なんじゃないかと錯覚さえしてしまう変わり様。まあ、それもあながち間違いではないのかもしれない。
豊かな自然が壊されている。
水の入った容器を振った後の如く海が荒立っている。
天に浮かぶ雲が跡形も無く消失する。
生命という大切な存在が悉く焼き払われていく。
これを地獄と言わずしてなんと言う?少なくとも、この事態を引き起こすきっかけとなった男には他に言葉が見つからなかった。
「………世界を壊す…それが、お前の役割だったな…」
大の字で抉れた地面に寝そべる彼は全身血塗れ。左腕は文字通り潰れてしまっていて感覚は無く、体から力が抜けていく彼は口から血を滴らせながらもそんなことを呟いた。
木々を焼く炎、荒れ狂う風、獣たちの悲鳴。それらを軽々と押し潰してしまう地響きが段々男に近づいてくる。
つまりは足音、地響きを発生させるほどの巨体が蠢き迫るのを知りながら、男は咳き込んだ後にため息をついた。
「……チクショウ…こんなのありかよ…!」
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