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黒い土煙が巻き上がるそこへ無数の光の束が降下。連続して激突し地面を消す破滅の雨は何人足りとも生存を許さない。人間なんてちっぽけな生き物ならば着弾せずとも風圧で、または光から副次的に発生した熱に溶かされて絶命は免れない。
「ゲホッゲホッ!ッハァ……正真正銘の、化物だな…!」
だから、破滅の雨から命を守った彼は人間の枠外に飛び出した者なのだろう。剣で叩くようにして無理矢理軌道を変えたことで消し飛ばされるのを阻止した男は一度だけ深く息を吸い込んで、
(まだ完全に世界が滅んだわけじゃねえ……致命的な被害があったとしても生き残りがいればまたやり直すことは出来る。長い年月をかけて繁栄してきたんだ、また時間をかければ失った日常は戻らずとも平和は取り戻せる…)
起きてしまったことを悔やんでも仕方がない。遅かれ早かれこうなっていた、だから男は開き直る。今じゃなくてもいずれ奴は世界を破滅させるために動き出していた、それを彼が目覚めさせてしまっただけに過ぎない。
元より倒すために目覚めさせたんだ。起きただけで世界が火の海になると知っていれば起こしはしなかったが、残念ながらそれを知ったのはすでに惨劇と化した後。
申し訳ない気持ちを抱いて心中で呟く───そこまでして完全に吹っ切れ、頭の中から全てを消し去り意識を戦いへ向けた。起きてしまったことに拘らない、いつも通りの彼らしい切り替えだった。
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