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(あの、野郎ッ……俺の『ワールド』を…吸収しやがって…!)
痛みのせいですぐに起き上がることが出来なかった男は憎き敵を睨む。距離が離れたせいでようやくまともにその全容を認識することが出来た。
うっすらと緑がかった白い巨躯。人間に似た形状をしたそいつはこちらに顔を向けて佇んでいた。真っ白な目には何も感じ取れない。彫刻のような無機質な目に男は舌打ちし、痛みを堪えて立ち上がる。
再び突撃を仕掛けようと両足に力を込め剣を引いた、その時だ。
「ゆ……ユラシル…」
名を呼ばれて息を飲み、呼んだ人物に顔を向けたユラシルという男。
「……み、ミラ…?おっおい!大丈夫かミラ!!」
突撃をやめて名前を呼んだ銀髪の女ミラにユラシルが駆け寄る。土砂の下敷きになっている血塗れの女は這い出ることも出来ない様子で、
「待ってろ、すぐ出してやる!」
グボァッッ!!!と剣を真横に振っただけで邪魔な土砂を吹き飛ばし、ユラシルはミラの肩に手を置いて声を張る。
「ミラ、シービスの奴はどこだ!?一緒にいたはずだろ!」
「ケホッ…わからない……吹き飛ばされた後の記憶が無いから、生きてるかどうかも…」
「くっそォッ…!お前らだけは絶対逃がしてやる、だから立てミラ!」
「…ごめんユラシル、無理みたい」
「は、はぁ!?何が無理なん……だ…」
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