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 そして、ここまでの無視と無関心が――――今、互いの国を窮地へ追い込んでいるのだ。  大量の黄金を手に入れて財を成しても、どんなに領土を広げようとも、肝心の『水』がなければ人間は生きてはいけない。  作物も家畜も贖う事など出来ようはずがないし、ましてや人間はミミズのように干乾びるしかない。  豊かな国土を維持するには、水源は絶対に必要なのだ。  その水を司る力を宿した王子を、ベリック国もガラハン国も無情に切り捨てた。  神の怒りを被ったか、互いの国では半年以上雨が降っていない。  これは必然であり、自分らが招いた結果だ。  細く頼りない川の水利を争って、戦争などしている場合ではない。 「――本意ではないが、ジュエル王子を確保する事が出来たなら……時期王位をジュエル王子へ譲って、自らは退き、宰相の地位へ就いてもいいと我が王子は言っておられる」 「なに? アスラン王子がそう言っているのか? 」 「そうだ。我が王子は……現王と違い聡明な方だ。この申し出を聞けば、さすがにジュエル王子もこれまでのわだかまりを捨て、大人しく国元へ戻るに違いないというのが、我らの考えた結果だ」  確かにそれならば、ジュエル王子も喜ぶだろう。  セレームとノアは目配せをしあうと、改めてファルに視線を戻す。 「……それは本当なのか? 王位を退くなど、ありえない気がするのだが? 」 「――――本当だ」  真実を言うと……これは半分嘘で、半分本当だ。  アスラン王子は確かにそう覚悟を決めているが、周囲はそんなとんでもない(・・・・・・)事など決して看過(かんか)するつもりはなかった。  王位はジュエル王子へ継がせるとしても、実権は宰相が握る手筈になっている。  ジュエルは一代限りの、飾り物の王となる。  そして後継は当然、アスラン王子の家系が引き継ぐことになると――――現王と大臣たちの間で、話は決まっていた。 「とにかく! リム・ロイが引っ立てられる広場へ人を配置して、ジュエル王子と思しき者が現われたら確保するのが最優先だ。貴殿もガラハン国で爵位を受けて栄耀栄華を極めたいと願うならば協力してもらおう! 」
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