最終章

3/7
57人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「僕はこんな不浄の場所にはいたくない。『竜の鱗』を咲かせた僕を眷属へ加える為に、迎えが来ている」  そのセリフと共に、雷が天を走る。  瞬間、ドーンという地鳴りのような雷鳴がとどろき、大気をビリビリと震わせた。  鼓膜が破れるような音に、その場にひしめいた民衆たちは全員耳を押えて地面に伏す。  次に、槍のような豪雨が天空から一気に放たれた! 「うわぁぁぁぁ」  突然の天変地異に、全てがパニックになるのは必然だった。  先程までリム・ロイの処刑ショーを見ようと、悪し様に囃し立てていた事も忘れ果てたように、民衆たちは右往左往し蜘蛛の子を散らすように広場から逃げ出そうとする。  それを制御するハズの兵士や憲兵たちも、どうする事も出来ずに薙ぎ倒されるしかない。  動乱に巻き込まれず、広場中央に佇んでいるのは――――ジュエルとファルとセレーム、そして鎖に繋がれたままのリム・ロイだけであった。 「セレーム様! 脱出用に用意していた馬が逃げてしまいます!! お早く! 」  遠くから悲鳴のようなノアの声が上がったが、反応したものはいなかった。  凍り付いたように、男たちは呻き声をもらす。 「オ、オレの言葉がウソだと? 何を根拠に……」 「あなたは、僕を売る事で貴族の地位を買おうとしている。違いますか? 」 『それは違う』と断言することが出来ない。  何故なら、ジュエルの言葉は事実だから。  押し黙るセレームの前に、再びファルが前に出る。 「ジュエル王子! あなたはガラハンの王族だ! ならば、故国の為にその力を使うのが義務でしょう!! 違いますか!? 」  しかしこれに、ジュエルは冷然と答える。 「その王族の僕を、今まであなた方は……ベリック国へ送り出した僕がどうやって糊口(ここう)を凌いでいるのかと、少しでも考えた事がありましたか? 」 「うっ――」 「ないでしょう? 」  ジュエルは夢を見ていた。  王の命令で、平和の使者として隣国へ赴く。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!