バケモノ系 ショートショート 『光る石』

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 サタキは、自宅にあったガラクタを並べて、公園でのフリーマーケットに参加していた。  しかし、ほとんどの人はチラッと見るだけで、立ち止まることも無かった。 「やっぱり、こんな物じゃ売れないか……」  しかし、終了時間が迫った時、一人の老人が立ち止まると、 「君、その石は何円(いくら)かね?」  それは、たまたま彼の部屋にあった赤く光る石だった。  その石を見詰めている老人に、サタキは、えーい! と思い切って、 「三万円です」  すると老人は考えて、 「そうか……。そうか……。仕方ないな……」  溜め息と共に財布を出すと、中から三枚出して、 「ほら、三万円だ……」 「どうも……ありがとう……」  老人は赤く光る石を受け取ると、去って行った。  その三万円を見てサタキは、 「あんな石に三万も出せるなら、きっと裕福な老人なんだ。 なら自宅には、もっとカネがあるだろう……」  サタキは、その老人を追った。  予想どおり老人は、大きな屋敷の門を開けて入った。  サタキは門まで行くと、中に入りかけている老人に、 「あのー! ちょっとー!」  老人は怪訝(けげん)そうにやってくると、門を開け、 「おー、さつきの青年……。何かね?」  するとサタキは老人を殴り飛ばした。  老人は、門の角に倒れグッタリしてしまった。  サタキは老人から、赤く光る石を奪うと、その屋敷に入った。 「何処かに十万円くらいあるだろう……」  中は薄暗く、中央の階段の横に、見た事もない巨大なバケモノの彫刻があった。  それは熊とゴリラを合わせたようなバケモノだった。 「なんという(すご)いバケモノだな……」  サタキが見詰めていると、バケモノの方から、 『そういう光る石がオレは好きだ。その光る石をオレによこせー!』  赤く光る石はサタキの手を離れると、バケモノの手に入った。  そしてバケモノが、 『もっと持ってるだろう。もっとよこせー』  と動きだしたので、サタキが腰を抜かして倒れると、後ろから殴られた。 「うわー!!」  それは、さっきの老人だった。 「バカな男だ。三万円で買ってやったのに……。 化け物の息子を見られたから、帰す訳にはいかなくなった……」  そして老人は、サタキの足を持って奥へ運びながら、 「今日のエサは、この青年だ」  バケモノは嬉しそうに()えた。  ――終――
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