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「……そうか。昔、このプールでなにか事故でもあって、変なモノが憑いているのかもしれないな。気味が悪いから、しばらく休んだら、もう外へ出ることにしよう」  とっさにそんな思いつきを語る。  ふたりがいるのは、首都圏からやや遠い、海の近くにある温泉街だ。耕太と恵は籍を入れた記念に、ここへ小旅行にやってきたのだった。仕事の都合で、披露宴やハネムーンはあとまわしにすることにしてある。  そして、このプールは、温泉街が共同で管理している施設だ。実際にこのプールで、昔だれかが死んだかどうかは知らない。でも、プールで死んだ人の幽霊が、泳いでいる人間の足を引っ張る、なんてのは、いかにもありそうな怪談噺だと思ったのだ。  耕太の説明に恵はうなずいた。 「ええ、もうこんなプールで遊ぶのはやめて、ホテルにもどりましょう」  妻を説得できたことに耕太は満足しつつも、内心ではひどくうろたえていた。
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