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   翌日、耕太は車に恵を乗せ、温泉街から少し離れた岬へと出かけた。  曇った日だった。海に突き出した岬の先端に立つと、遠くに黒みを帯びた水平線が見えた。視線を真下におろすと、はるか下方に、深い緑色をたたえた海面が見えた。 「この岬で亡くなる人が多いらしいね」  と、耕太は聞きこんだ噂話をしゃべった。「海水の温度が低いせいなのか、海流のせいなのか、かなり水泳ができる人でも、この岬から落ちたら助からないみたいだよ」 「ねえ、怖いわ、耕太さん、帰りましょう」  耕太は「はは」と笑って、怯える恵に手をさしのべた。 「大丈夫だよ。そんなのは、落ちてしまったら、の話。ぼくがしっかりと手を握っているから、ほら、ちょっと見おろしてごらんよ。けっこうな迫――」  迫力だよ、と最後まで言うことはできなかった。  背中に、ドン、と衝撃があった。
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