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   次の瞬間、それまで足裏に感じていた確かな地面の感触が、ふっと消えた。  耕太は宙に浮いていた。  上とか下とかいった感覚が消えた。空中で体が変な向きになっていた。  岬のへりに立っている恵の姿が目に映った。彼女は落ちないようにするためだろうか、四つん這いになって地面に両手をつき、落ちていく耕太を見おろしていた。  驚いたのはその顔だった。まがまがしい笑みをたたえて、ぜんぜん恵のようではなかった。はっきりと、麻耶の面影を感じさせた。 (操られている?)  直感的に思ったのはそういうことだった。  恵は、麻耶に操られている。  昨日、プールで足をつかまれて、水のなかに引きずり込まれそうになった時に、麻耶の幽霊に意識を乗っ取られた。  そうして、彼女に操られて、このおれを殺そうとした。  ほんの一瞬の間に、耕太はそう理解した。 (ちくしょうめ)  毒づくと同時に、耕太は全身に衝撃を受け、海面にたたきつけられていた。  そのまま、冷たい水中に沈む。  いやというほど塩辛い海水を飲みながら、耕太はあがいた。 (死んでたまるか。これでも高校では水泳部だったんだぞ。絶対に生きのびてやる) しかし――。
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