彼の香り

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たとえ同じ柔軟剤や香水、ヘアスプレーを使っていても、その人それぞれの毎日の行動や生活習慣、その人自身の匂いによって変化する。同じにおいの人はいない。 その差がたまらなくエモくて好きで。 友達にはじめ話したときはドン引きされたけど、今じゃ慣れたのかクラスの子たちからもアドバイスを求められたりする。 「彩芽ちゃんおはよう相変わらずいい香りだね」 「毎度毎度抱きついて匂いを嗅ぐな息を吸うな」 「彩芽ちゃんの匂いは落ち着くんだよ。もうちょっとだけ」 彩芽ちゃんとは高校1年の時から同じクラスになり、初対面で香りに惚れた。 黒髪からほのかにかおるローズとラベンダーのボディミストの組み合わせが絶妙なのだ。 だいたい香りを確認すればどのメーカーか見当がつくけど、彩芽ちゃんのものは分からなくて。聞いたら自分でブレンドして作ったという。 その香りが好きすぎてくっついてるうちいに波長もあい親友になってから2年目だ。 「はぁ~いいよ今日も彩芽ちゃん最高だよ」 「とか言って。一番はあいつの匂いのくせに」 「そうだんだけど……」 「何、深刻な顔して」 「ううん、なんでもない」 「ならもうすぐ先生くるから席につきなよ」 「はーい」 名残惜しいけど朝のHRが始まるため、大人しく自分の席についた。 そして先生が入ってくるのと同時に、ガタンと隣の席の椅子がひかれた。 「おはよう秋斗君」 「はよ」
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