彼の香り

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もし今後、永久にあの香りを堪能できないとしたら……。 いや、ダメだ絶対ダメ。 そんなことはあってはならない。 これは何としても解決しなければ。そうと決まれば行動あるのみ。 一人決意して、残りの授業に集中した。 ーーーーーー --…… その日から彼の香りだけじゃなくて、行動も注意して観察することにした。 朝、昼休み、授業中。 怪しまれないように、けれど何か証拠を掴めるように動向を探る。 それを1週間ほど続けると、ある規則性が分かってきた。 スマホに誰かから連絡がくると3年生がいる西棟へ向かっていく。 そしてたまに今は使われていない資料室へ行っている可能性がある。 西棟でも私たちがいる東棟でもない別棟の方へ行って帰ってきた秋斗君からは、ほこりっぽい匂いと油絵で使われる絵の具の匂いがした。 画材や絵の具の独特の匂いがするのは美術室だけど、先生や美術部の生徒が休み時間も利用しているから、そこにわざわざ美術部でもない秋斗君が行く可能性は低い。 となると同じ別棟内にあって今は使われていない資料室が妥当だ。 あそこは今は飾られなくなった絵画や資料が保管されており、人目にもつかない。 「目的はなんなんだろう……」 学校から家までの帰り道、うーんと首をひねる。 この行動パターンが分かったとなれば、次は実際に尾行して現場を確認したほうがいいだろう。 そうすれば目的が分かるはずだ。
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