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 その夜。  コンコンコン  小さなノックと共に姿を現したのは、イアンたち3つ子だった。 「まだ寝てねぇのかよ。さっさと寝ろ、10時だぞ」 「…いやだ」 「ねれないんですよ〜」 「ねれたらきてねーよ〜」  ソファに座って本を読んでいた俺の元に、3人がそろそろと寄ってくる。 「ルーク、ごほんをよんだりするんですね!そういうのよまないとおもってました!」 「うるせーな、いいだろ別に不良が本読んだって」  知らないうちにイアンとランディーは俺の隣にちょこんと座られ、カーティスには背後に回られていた。  まったくすばしこい3つ子だ。 「きょうはルークつよかったな!せいちょう?した!」 「はいはいそりゃどーも。とか言って、お前ら俺よりつえーだろーが。上から目線なの腹立つな」 「んふふ、ぼくたちまた、せいちょうしましたからね!」 「みんな、つよくなった…」  ほんと4歳児とは思えねーな。  そう、4歳児とは思えない。  こいつら、怖くはないんだろうか。  人ではない、ましてや人知を超えた力を使うことが、怖くはないんだろうか。 「…お前ら、怖くねーのかよ」 「…?こわい?」 「こわいって、なにがですか?」 「こわいこと?あったかそんなん」  3人は総じてハテナを頭に浮かべた。  悪魔と戦うこと、力を扱うことだ、と聞いた。 「へんなことききますね!ルーク」 「そんなこと、父上にもきかれたことないぜ!」 「…あたりまえ、だとおもってた…けど」  屈託のない笑みを浮かべてそう答える彼らは、記憶の中にある俺が4歳の時とは酷く違った。  世の中の4歳でこんな4歳もほとんど居ないだろう。  ふと、ランディーがあっと声を上げた。 「でも、まもりたいものがあります!いっぱい!」 「!ある!いっぱいある!」 「いっぱい…まもりたいもの、ある」 「ふーん…そりゃ何だ」  おもちゃとか、自分の親とか、兄とか弟とかだろうと思って聞き返した。  その、一瞬前の俺を、俺は責めた。 「父上と、まちのひとたちです!」 「あと、かあさまのおはか!」 「しようにんのひと…と、おとうと」  予想外だった。  まさかそこまで含むとは。  4歳のくせに、どこまで見えてるんだこいつらは。  俺は本気で後悔した。  聞かなきゃ良かった。  自分の視野の狭さが、突きつけられたようだった。 「あと、まもりたいもの、ふえましたよ」  落ち着いた声、嬉しそうに細められた目。  4歳とは思えない表情で発された言葉は、耳を疑うようなものだった。 「ルークです。ルークもまもりたいです」 「!」  会って10日と経たないやつを?  守りたいだって? 「…はっ、そうかよ」  それがこいつらの"戦う意思"って訳か。  こりゃ俺が敵うもんじゃねえな。 「まもりたいもの、いっぱいあります」 「だからやめらんねーんだ!」 「まもりたいから…」  4歳のくせに、色々考えてんだな。  俺が4歳の時は――いや、やめだ。  考えたってどうにもならん。  あんな嫌なもん、思い出したって1ポンドにもならねえ。 「ほらさっさと寝ろ、俺も寝っから」
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