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2-4
空がだんだんと紫がかり、夕暮れ時も終わりかというころ。
そろそろ帰るか…新刊も買ったしな。
俺は、しばらくぶりに購入した図書の続きを抱え、屋敷への帰路を歩いていた。
その時のことだ。
『眩しすぎるものは、時に自らを蝕む毒になる』
そんな声が聞こえた。
いや、聞こえたと言うよりは、直接語りかけられた、という方が正しい。
俺の目の前に現れたそいつは、どうやら俺にしか見えないらしい。
むしろ、俺もそいつによって見えないものにされているのだろう。
背景となる人々は、何も無いかのようにすり抜けていく。
「なんだ、お前」
『眩しすぎるものに、あてられてはいまいか?』
「…余計なお世話だ」
そいつは俺に向かって人差し指を伸ばした。
『いずれ来るだろう。圧倒的な光の前にその目が焼き切れ、黒く染まる時が』
「あ?うっせーよ、何が言いてーんだ」
『黒く染まったものは、白き布に戻ることは無い』
「聞いてんのか!!」
『染められたものは光を恨み、嬲り、屠り、殺し――』
――"悪魔"となるだろう。
黒い風が通り抜け――あ?俺は何をしていた?
…まあいい、本は買ったし。
あとはこれを堪能するとしよう。
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