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3-1
俺がアインたちと出会って1ヶ月が経った。
あの後も何度か悪魔と戦ったが、肝心の"殺人鬼の姿をした悪魔"には出会えていない。
そう、そもそもそれが元で俺はここにいるんだ。
「上達したなルーク!」
「は、あんたが衰えたんじゃなくてか?」
「言うようになってきたな…!」
今日はアインに相手をしてもらっている。
俺もそこそこ強くなってきたように思う。
気のせいか、生身の腕っ節も上がってるんじゃないか?
回し蹴りする右足の先に、今度は切れない状態の銀の刃を付ける。
左手のほうに銀の能力を控えさせ、同じ右足で追撃を入れる。
「がんばれー!やっちまえー!」
「父上ー!」
「ルーク…うまい」
今日は3つ子は見学だ――屋敷の窓から。
「わっやべっ、おばさんにおこられるぞ!」
「ちょ、カーティス!はやくいってください!」
「…!」
家庭教師である彼らのおばの目を盗んで、だが。
「はっはっは、あの子らは見てて飽きないだろう」
「…まあな」
俺がアインとの手合わせを終え、昼食のために屋敷へ戻ると、おばから逃げる3人の声が聞こえた。
俺はそれを背に、食堂へ向かう。
一体何人入るんだという広さの食堂には、長いテーブルと8個の椅子があり、厨房はこちらから見えるようになっている。
厨房のコックに軽く会釈し、コルクボードに貼られた今日のメニューを確認した。
ここに来て気がついたことだが、世の中にはうまい飯があるもんだな。
前みてえな暮らしじゃ、到底ありつけないようなもんばっか食わせてもらってる。
「苦手なものはありました?」
コックが聞く。
「いや…苦手なもんがあるほど、色んなもん食ってねえからな」
そういうとコックは、
「ならここでいっぱい色んなものを食べてください、それで苦手なものが出来たら、私に言ってくださいね」
と笑って言った。
「…わかった」
「ふふふ、あとは待っててください、もうすぐ出来ますから」
あのコックは不思議だ。
なんで俺なんかにあんなことを聞くんだ。
無視して好きにやりゃいいってのに。
俺はメニューから目を離し、1度自室へ戻った。
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