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 2008年2月15日(金)  AM11:00  それはそれは奇妙な出会いだった。  いや、必然ではあったのだろう。  だがそれは唐突だった。  彼らにはわかりきっていたことだったんだと思うが。  俺の名はルーク。16歳。  本当はルーカス・ブレイデンっつーんだけど、まぁみんなルークって呼ぶ。  イギリスのロンドンで何でも屋――いわゆる裏稼業を生業にしてる、割とどこにでもいる不良だ。  学校は辞めた。  元々寄宿学校に行ってたが、クソ真面目で面白みのねぇ、親に言われて行かされてるだけの場所に、生きる意味を見いだせなかったからな。  知り合いのつてを使って名前を偽り、親から逃げてもう2年が経とうとしている。  まぁもうさすがに見つけ出せまい。  俺の元の名前を知る人もいなければ、調べることも出来まい。  そんなことはもう不可能だろうと思っていた。 ――あの時までは  今日はどこでメシを食うか考えていたとき、袖を引っ張られて、下を振り向いたんだ。  そこにはまだ幼い子供が立っていた。 「What's the matter? Lost?」 「…」  俺が問いかけても答えない。  しかし、3人いた子供うちのもう1人が、俺に話しかけてきた。 「Hello,Harry George…No, Lucas Braden?」 「!?」  その言葉に、俺はぎょっとしたんだ。 「Oh, that reaction…Sounds light.」  歳はまだ5つくらいだろう。  俺のリアクションを見たそいつは、当たりだと言わんばかりに口の端をニヤリと上げた。  透き通るようなブロンドヘアに、青みがかった灰色の瞳――が3ペア。  同じ身長に同じ容姿。  もう消失したはずの俺の名前を、こいつらは今呼んだ。 「――何の用だ」 「よかった、まちがいないみたいですね」  やつは、俺が睨みつけながら問いかえしても、全く意に介さず屈託の無い笑みでそう言った。 「ルーカス・ブレイデンさんですよね、はじめまして。ぼくはランディー。ランディー・アゼル・ノーランドっていいます」 「聞いてない」 「こっちはぼくのあにのイアン、おとうとのカーティスです」 「だから聞いてねぇって!!!」  俺はやつを――ランディーを、もう一度強く睨んだ。  さすがに子供相手に言いすぎただろうか。  そう思っていた。 「すいません、つい」  しかしランディーは、俺の予想に反して、頭を掻きながらはにかんだ。  俺は少しバツが悪くなった。  さすがに今のは酷かったなと思い、冷静になって話を聞く。 「…んで、なんの用だよ」 「…!」  ランディーは嬉しそうに俺を振り返った。  んだよ、これじゃ俺は、子供に大人気なく怒鳴った悪者じゃねーか。  羞恥を覚える俺をよそに、ランディーは話し始めた。 「えっと、えっとですね、その、さいきんニュースでよくみる、さつじんきのニュースがあるじゃないですか」 「…あぁ、あるな」 「それの、はんにんをさがしてほしいんですー」 「へぇ、それはなんで」  俺は聞いた。 「え、それはいえないんですけど」 「じゃあ無理だな、俺は残念ながらガキからの依頼は受け付けてねーし、そもそもそれはサツがやることで、俺がやることじゃない」  どうやらランディーは、理由を聞かれるとは思ってなかったらしい。  俺はただの"何でも屋"だ。  殺人鬼の捜索もしょっぴきも、俺がやることではない。  しかしランディーは首を横に振った。 「こどもからのいらいじゃないです」 「?どういうことだよ」  ランディーは少し、迷うような表情を見せる。 「…どうしよう、ついてきてもらったほうがいいのかな」 「そうすればー?つよそうだし!」  そう言ったのは、今まで一言も発していなかった3人目。  見れば見るほどよく似た顔だ。 「カーティス、かんたんにいいますけど…」 「まよってるひまないって、父上まってる」 「…それもそうですね」  ランディーは俺に向き直って言った。 「ついてきてもらっていいですか、すぐそこなので」 「…」  正直、ついて行きたいかと言われるとノーだ。  だが、俺がノーと告げるより先に、俺の本能がイエスと答えてしまった。 「――わかった、仕方ねぇからついて行ってやるよ」
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