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 左胸と右手の甲、そして足首に刻まれた、金色と銀色と紫色の印が、淡い光を放ちながらその"力"を発現する。  正直、こんなことになるとは思っていなかった。  昨日こいつらに出会ったあと1度街へ戻って、あるかないかぐらいの自分の身の回りのものを持ち、この屋敷に戻ってきた。  その後、休めと言われて案内された部屋は、今までに見たことの無いくらいだだっ広い部屋で、俺が 「広すぎだろ…これほんとに1人で使っていいのか」  と問うと、 「あぁ、あいにく今空き部屋がここしかなくてね。隣は食堂と、その反対側は子供たちの部屋になっている。ドアを出て向かいは私の寝室だ」  と言われた。  3つ子の部屋はこれよりでかいと言うのだから驚かざるを得ない。  そして今朝、その"力"の洗礼を受けた。  悪魔と戦うための、"力"。  正直疑い半分だったが――これはやばいぞ。  何がどうやばいのか、説明する語彙がないのが悲しいが、これはさすがに人知を超えている。  まず"ホルダー"が力を発するのに必要な"キー"は、物理法則では測れない。  が、そこに存在し、視認できる。 「人間が作ったというのに、物理法則で測れないというのも、なんとも皮肉だがな」  と言うのは、3つ子の父親――アイン・アゼル・ノーランドだ。  "キー"には色が存在し、この家には金、銀、紫のキーが存在する。 「私は金しか使えんがな」  アインはそう言ってはにかんでみせた。  キーには向き不向きがあり、色んな色を使える人間も居れば、そう出ない人間もいるとか。 「ぎんのキーはおれがつかってるんだぜ!いいだろー」  そうやってけらけらと笑うのはカーティス。 「ぼくもむらさきもってますよ〜」  と、にこにこして言うのはランディー。 「イアンだけ持ってねぇのか」  俺がそう問うと、イアンは静かにアインの方を指さした。 「…オレは、父上のもらう。あれ」  どうやら、アインのキーを受け継ぐらしかった。  そして、そのキーをもつ"ホルダー"が味方にし、力を分け与えた存在が、俺のような"リンクアシスタント"ということらしい。  その目印は、体に彫られたタトゥーのような紋様だ。  鼓動を打つように波打つ淡い光を放ち、強く力を発現すればするほど、美しく輝く。 「ふむ、ルーク、君は飲み込みがはやいな、教えるほうとしてもとても楽だ」  アインはそう言った。  俺は正直比べる対象がいないから分からないが、どうやら相当早いらしい。  俺の訓練に付き合うランディーたちも、目を輝かせていた。  思考を全て手先に集中させ、力を制御し、金を扱う。  色からインスパイアされた能力は、ホルダーが具体的に可視化し、それと同じものがリンクアシスタントにも与えられる。  この場合は金だ。  金色の鍵だから、金だ。  ほらあれだあれ、学校行ってねーからわかんねーけど、周期表?だかに載ってるやつだ。  売ると高いやつな。  まあ深いことは考えない方がいいか。  単純に、金を造形する。  それだけの事だ。 「イメージ出来りゃなんとでもなるだろ、こんなの」 「君みたいに単純とは行かないのが常だよ」 「バカにしてんのか」 「褒めてるのさ」  アインはそう言って笑った。  どう見てもバカにしてんだろ。  付き合いは短ぇが、それくらいはわかんだからな。
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