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 1週間が経つ頃には、俺はすっかり能力をものにしてしまった。 「…ルーク、たたかえる」 「さすがです!」 「なあ、おい、つぎおれとたたかえ!」  この通り、今となっては3人とも俺に挑んでくるようになった。 「はっ、いいけど、負けて泣くなよお前ら!」 「…なかない」 「このぼくがなくわけありません!」 「みんなでルークぼこる!!」  おいおいボコるなんて言葉どこから覚えて…いや、待てよ俺か。  そういやこの前、クセでつい言っちまったんだったな。  アインに 「そういった言葉遣いは、子供たちが真似するから出来るだけ控えてくれ」  と言われたんだったな…すまん。  だがまあ、本人は気づいてないようだから良しとしよう。 「はっはっは、微笑ましい限りだ」  あの通り執務室の窓から眺めては笑っている。 「…っと、あぶね」  よそ見している暇ではなかった。  子供とはいえ、イアンもランディーもカーティスも、力の扱いは俺よりも上だ。  しかも5歳だと思っていたら4歳だ。  今年の8月で5歳らしい。  まったく末恐ろしい兄弟だな。  語彙も身体能力も、並の4歳児ではない。 「そっこだー!」  特にカーティスは、突っ込んでくることに迷いが無さすぎる。  俺が3人の相手をして20分が経った頃、先程まで執務室にいたアインが、外に出てきていた。 「4人とも聞いてくれ」  手を叩いて聞くように促したアインの顔は、先程の笑みとは打って変わって真剣だった。 「奴らが出た」  それは、あえて問うまでもなくわかりきったものだった。 「ついにか…」  俺は少し震えた。  怯えた訳では無い。  武者震いだ。 「ルーク」  アインが俺の名を呼ぶ。 「腕試しだ」  口元が緩む。  やってやろうじゃねえか。  俺の表情を見たアインは、満足そうに微笑んだ。  力によって具現化された金が、鋭利な刃物の形を作り出す。  うねるように集まり、ひらひらと光を閃かせながら空間に浮かぶそれは、目の前の瘴気を纏ったに向かって飛ぶ。  1つ、また1つと飛ばし、はやがて黒い塵となって消えた。 「お見事」  アインはそう言って何度も頷いた。  3つ子は俺の足元で、惚けたように俺の事を見ている。 「たりめーだ。むしろ拍子抜けしたな」 「はっはっは、頼もしいことだ」  地面に落ちた黒い塵をさらさらと触りながら、俺はアインに聞いた。 「…こんなもんしかいねーのか」  アインはふっと遠い目をして答えた。 「まだまだ、強い奴はいくらでもいる。"There is always something better."」 「…その見分け方は。あるんだろ?そういうの」  アインは頷いた。  そして指で3を示すと、その"見分け方"を話し始めた。 「1つは"気"だ。纏っている瘴気。あれが見えなければ見えないほど強い。2つ目は"時間"だ。人としての姿を保てる時間が長ければ長いほど強い。そして――」  ――3つ目は1番単純、"目"だ。人々から吸い上げた悲しみと共に燃える野心が見えたなら、それは強いやつだ。野心しか見えないのならそれはまだ未熟なものだ。  アインはそう言った。 「…んなもん、どうやって見分けんだよ」  目による攻撃性の意思表示と読み取り――そんなものは、前からずっとやっている。  それぐらい出来なきゃ、野垂れ死ぬからな。  だが…悲しみ、だと?  そんなものどうやって読み取る? 「そのうちわかるさ、お前が本当に意志を持って戦うようになればな」  俺は、アインのその言葉が腑に落ちずに不貞腐れるのだった。
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