その1 待つのもよし

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その1 待つのもよし

「おかしいな、確かここに入ってたはず……」  おじいさんはさっきからずっとポイントカードを探している。ポイントの後付けはできないので待つしなかい。  後ろは長蛇の列だ。隣で大学生さんとメスの三毛猫さんが奮闘しているがとてもさばききれない。  早くしてくれないかなぁ……とじれながら大福を見た。前足をきっちりまとめて香箱座りをしている。猫ってイライラしないのかな、と考えてるとお客さんは「あったあった」とカードを出した。 「申し訳ございません……こちら当店のカードでは……」 「あーすまんすまん、Wポイントはつかないんだったっけ?」 「当店はこちらのカードでして……」  おじいさん相手に三回、同じやりとりをした。後ろに並んだおばさんがのぞき込んでくる。大福はさっきより鼻の位置が下がっている。もしかして寝てるんじゃないか。 「すまんねぇ、やっぱりないわ」  おじいさんが全くすまなくなさそうに言うと、大福は急にガバッと起きた。 「ありがとうございますにゃ!」  ……やっぱり寝てたんだね、まだ会計は終わってないよ。
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