その2 小銭ちゃりんちゃりん

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その2 小銭ちゃりんちゃりん

「あー小銭いっぱいあるー」 「全部出しちゃいなよー」 「えーでもー」 「ほら手伝うからー」  小学校五年か六年の女の子三人組がきゃいきゃい言いながらひたすら十円玉を並べている。小銭を出すのはかまわない、けれどもう四十枚は越えてるんじゃないか。 「わっすごーい、五円玉もいっぱーい」 「出しちゃえ出しちゃえー」  支払う本人は「えーでもー」と言っているのに他の二人が勝手に財布から小銭を出す。君たちいい加減にしたまえ、誰がその小銭を数えるんだ…… 「あの……もう少し大きいお金はありませんか。こんなにたくさんの小銭は困り……」  なるべくやんわりと言おうとしたとき、大福が前足を小銭に乗せた。しかも爪を出して、ちょいちょいと小銭をトレイから落とそうとする。 「こらっ……大福!」 「ちゃりんちゃりんが大福を呼んでるにゃ」 「呼んでない! それはお客さんのお金……」 「タイヨウにも聞こえるにゃ。ちゃりんちゃりん、ちゃりんちゃりん、ちゃりんちゃ……」  まずい瞳がまん丸になってると気づいたその時、「りんにゃー!」と叫んで大福はトレイごと小銭をひっくり返してしまった。 「こらー!! スミマセーン!!」  顔面蒼白で大福と小銭を押さえようとしたが二兎を追う者は一兎をも得ず、大福はカウンターから飛び降りて生き物のように跳ねる小銭を追いかけ、三毛猫さんも参戦しての大惨事となった。 「ごめんなさい、小銭はたくさん出しません」  結局、小銭はぼくが全部回収して数えた。女の子たちはしおらしく頭を下げている。 「大福も謝りなさい」 「猫の本能だから仕方ないのにゃ」  ……全く反省はしていないようです。
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