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その0 白猫レジ店員 大福さん
白いレジスターに押しつぶされる夢を見た。
冬なのに汗だくになって目を覚ます。寝ぼけまなこで携帯電話を探すとぐにゃりとした感触があり、思いきり猫パンチを食らってしまった。
白猫の大福が恨めしそうにこちらを見る。
「ごめん大福……入る?」
早朝の寝室は凍えるほど寒かった。エアコンを稼働させて掛け布団を少し開けたけれど、大福はそっぽを向いてしまった。喉はゴロゴロ鳴っているのが聞こえる。
最近、アルバイトの夢をよく見る。繁盛期の書店は有り得ないほど忙しく、レジ要員のぼくは毎日のようにお客さんに怒られている。
きっと向いてないんだろう、けど続けないと財布が空のままだしなぁ、休みたいなぁと考えながら大福のしっぽを握った。喉だけでなく腹もゴロゴロと鳴っていて、しっぽまで振動が伝わってくる。
心地よい感触に、また眠りに落ちた。
***
ぼくはレジの前に立っていた。朝の十時だというのに長い列ができている。毎日大量に入荷する雑誌や書籍の品出しは各売り場の担当さんに任せて、ぼくはひたすらにレジを打つ。
「いらっしゃいませにゃ」
そう、レジ店員の大福と一緒に……
「んんん?」
レジカウンターの上に大福が鎮座していた。体重7kgの大福がいると狭いカウンターがますます窮屈だ。
ぼくは戸惑いながら「いらっしゃいませ」と言って雑誌のバーコードを読み取った。おそるおそるお客さんの顔をうかがったが、大福を全く気にしていない。
「ありがとうございます、735円でございます……」
お客さんが千円札を出すと「ポイントカードはお持ちかにゃ?」と言った。
ぼくでなく、大福が。
お客さんは「ああ、そうだった」と言って直営店と専門店共通のポイントカードを出した。猫が話すことは気にしてないみたいだ。
訳がわからないが、いつも通りカードをスキャンして預かり金を入力、お釣りを渡す。
「ありがとうございました」
「ありがとうございますにゃ」
ぼくと大福は同時に言った。お客さんは何事もなかったように袋を受け取り、次のお客さんがぼくの前に来た。
「いらっしゃいませにゃ」
これは夢だ、きっとそうだ、働きすぎて頭がおかしくなってるんだ。
ところがその後も延々と「レジ店員 大福」との接客が続くのであった。
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