特権階級の女

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『クラスで最下位ポジションにいた紗栄子が死んでも、私たちは今まで通り変わらない。 紗栄子は自分が世の中に不必要だって、ちゃんと理解して死んだのよ。 紗栄子が死んだのは構わないけど、これから紗栄子をいじめられないと思うとさみしいね』 特権階級の一族の自分が平民をいじめて何が悪いと晴江は思い、車の後部座席にもたれて微笑んだ。 いじめられるのが死ぬほど嫌なら、学校をさぼって、就職もせず、配給の食料と衣類で生きていけば良かったのにと晴江は思って、死んだ紗栄子をあわれんだ。 現代で餓えてる人は誰もいない。 学歴がなく就職もせず、生産性がゼロの人でも配給の食料と衣類が国からあてがわれるからだ。 そしてAIやロボットが作り出した富を頼りに生きている人たちは、『ロボットのすねかじり』と言われ、バカにされていたが、今では全人口の3パーセントが『ロボットのすねかじり』だった。 『晴江はさ、特権階級の一族だから余裕でいられるかもしれないけど、私や菜々美は違うんだよ。 紗栄子の机から遺書が出てきたって噂だしさぁ』 紗栄子の自殺。 そして遺書。 毎日が鉛色のように見えていたはずなのに、急にドラマチックで鮮やかな色の今日が来た。 晴江は偉大な父と同じように、世の中に新たな価値を与えられる作家になりたいと思っていた。 そんな晴江は非日常が何よりも大好きだった。 非日常には新たな価値が生まれる予感がするから。
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