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その日、西条学園中学に来ると、学園内は騒然として慌ただしかった。
その理由は、三年生の女子生徒、小原紗栄子が校舎の屋上から飛び降りて自殺をしたからだ。
家から徒歩で西条学園中学に通っている原島虎治も、学園の近くに来たとき、すぐに異様な空気を感じ取った。
そして虎治が学園の校庭をゆっくりと歩いているとき、虎治の子分である木島辰雄が慌てた様子で虎治の元に走ってきて、息をきらしたままに話し始めた。
「大変だよ、虎治君。
小原紗栄子が校舎の屋上から飛び降りて自殺したんだ。
紗栄子の机からは遺書が出てきたらしい。
ヤバイよ。
もしかしてその遺書にオレたちのことが書かれているかも……」
予期せぬニュースに虎治の顔が険しくなった。
虎治のグループは小原紗栄子をおもちゃにし、泣き叫ぶ紗栄子をいじめまくっていたのだ。
虎治は批難の声が自分にも来るかもしれないと頭の片隅で思ったあとに、開き直ったようにこう言った。
「まぁ、あれくらいいじめたら自殺もしたくなるんじゃねぇか。
紗栄子が死んでから慌てても仕方ねぇ。
あとはなるようにしかならねぇよ」
ちょっと投げやりな虎治の態度に辰雄は不安になっていた。
そして辰雄は、取り乱しながらその不安を口にしていた。
「どうにかなるって、そんな小さな問題じゃないよ。
このままじゃ、オレたちのIDには一生消えないマイナス点がつけられちまうんだぜ。
信用スコアが低い人間は社会的に信用されない。
つまりオレたちの将来は……」
「ガタガタ抜かすな!」
虎治が辰雄をにらみつけて、一喝すると、辰雄は何も言えずに口をつぐんだ。
「信用スコアのマイナスなんかにびびんじゃねぇよ。
信用スコアが低くても、特権階級になれば問題ねぇんだ。
信用スコアなんてものはな、無能な平民の格付けなんだよ!」
虎治は特権階級の一族で、虎治のマイページには王冠のマークがある。
そんな虎治は信用スコアのマイナスを少しも気にしていなかった。
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