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加藤は中川の話を聞きながら、小原はなんてことをしてくれたんだと思い苛立っていた。
加藤が教師として大切にしていること。
それはほどほどに生徒と関わり、トラブルを避け、問題を起こさぬこと。
この誓いさえ守れれば、自分の教師生活は定年まで安泰だ。
飽食の時代と言われている現代で熱血教師は古すぎる。
だって現代は、働かずとも食べるに困らず、最低限の生活は国に保証されている。
そんな貧しい人がいない現代は国民総平等時代とも言われていた。
98パーセントの平民と2パーセントの特権階級の人たちで、この世の中は成り立っているのだから。
それなのに、自殺だなんて……。
加藤は自分の運のなさを恨み、天を仰いだ。
「加藤先生、小原紗栄子の自殺に心当たりはありますか?」
加藤は中川のその問いに深いため息をつくと、投げやりな口調でこう言った。
「紗栄子が死んだ理由なんて知らないよ。
僕がわかっていることは、僕が面倒に巻き込まれたっていうことだけだ」
科学万能のこの世の中で、自殺なんていう非合理的で、生産性のないことが起きる理由がわからない。
加藤はそんなことを思いながら、心の中で小原紗栄子を憎んでいた。
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