特別支援学級

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 学校までは歩いて20分くらいだ。小学校の頃はお母さんが一緒に登校してくれたのだが、中学校に上がってから1人で通学している。部活の朝練がない子たちが友達と固まって歩いているが僕にはそんな友達はいない。特別支援学級の子たちは親が送迎している子が殆どだ。でも僕はお母さんの仕事の邪魔をしたくないので出来るだけ世話にならないようにしている。  学校に着いて上履きに履き替える。白い布に落書きがあった。バーカと書いてある。他人にバカっていう奴の方がバカなんだよ。落書きは鉛筆で書いてあるみたいで灰色だった。僕は通学カバンの中に入っているペンケースを出して、消しゴムでそれを擦った。バーカは簡単に消えた。これを担任の先生に言ってもいいのだが、こんなことは日常茶飯事だ。ウザい、死ね、と書かれたこともあったし、蛙の死体が上履きの上に乗っていたこともあった。何が楽しくてそんなことをやるのか分からない。カレンダーの日付と曜日を暗記するほうが楽しいんじゃないかと思う。  特別支援学級は校舎の1階の端にある。保健室の隣だ。朝のホームルームが始まると、僕の同級生の咲良ちゃんが泣き出した。咲良ちゃんはたまに火が付いたように泣き出す。これといって理由もなく色んなことで泣くので宥める方法も分からない。でも、みんなが慣れっこだから騒ぐ子もいない。  一時間目は僕の好きな本を先生が読んでくれると言った。小人が出てくる絵本だ。小人は架空の生物だとお母さんは言ったが僕はそれは間違えていると思う。だって庭の木の茂みの中に小人が居るのを見たことがあるんだから。グリーンの服を着て帽子を被っていた。それにお化けも本当にいることも知っている。僕が昨晩ふざけてシーツを被ったみたいに白い布を被ったお化けだった。
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