020『お引越し』

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020『お引越し』

魔法少女マヂカ・020   『お引越し』 語り手:マヂカ     ここに住むことになったのは不可抗力だ。  友里の事が気になって後をつけたら、妹の茜里を助けてしまった。そのために「この辺に住んでるから(^_^;)」と口から出まかせ。  大塚駅から徒歩六分のところに家を借りた。女子高生の一人暮らしも不自然なのでケルベロスを姉ということにして引っ越してきたのが昨日のこと。  ご近所の手前もあるので、引っ越しやら手続きはリアルにやった。  トラックで荷物を運び、ケルベロスを「お姉ちゃん」と呼びながら掃除や片づけ、合間に役所の届や電話の手続き、ガスや水道の開栓をやってもらい、町会長さんとご近所へのあいさつ回り。気のいいお向かいさんにゴミの回収やら分別のしきたりなどを教えていただく。 「どうもありがとうございました」  挨拶して家に戻ると、もうすぐ日没と言う時間。 「あーーくったびれたああああ」 「男にもどらないでよ!」 「どうせなら兄貴って設定にしておいてもらいたかったぜ、ご近所の手前、必要な時だけお姉ちゃんやるのも疲れるぞ!」 「仕方ないでしょ、兄なんてことにしたら偽装で実は……なんて変な興味持たれちゃうでしょ」 「ま、いいけども。肝心の友里のことは江の島弁天に丸投げしてしまうことになってしまったじゃないか」 「いいのよ、友里さえ幸せになってくれたら。ポイントは別の所で稼ぐから」 「じゃ、今日のところは消えていいか?」 「だめよ、これから引っ越し初日の晩御飯」 「食べなくったって、どうってことないだろ」 「ダメダメ、明日出すゴミにはちゃんと晩ご飯の弁当ガラなんかが入ってなかったら疑われちゃうわよ」 「んなの、魔法でササッとさ……」 「文句言わない、コンビニ行って買って来るから、お姉さんらしくして待ってて」 「はいはい」  女らしく居住いを正したケルベロスの綾香がお茶を沸かしに立って、わたしはお財布を掴んで玄関へ。五センチほど開けたカーテンからは、その姿がお向かいさんに見えているはずだ。  コンビニでお弁当を買って、五六歩出たところで巫女さんが立っていた。 「あ……」  東池袋の生活道路に巫女さんが立っているのは、やや不自然。そう思ったら、巫女さんは帰宅途中のOLさんというナリになった。 「えと、神田明神さんとこの巫女さんですよね」 「はい、今度の要海友里さんの件は、江の島弁天さんに依頼されたので、ポイントは2です」 「えー、結果オーライだったんだから、5くらいはちょうだいよ」 「決まりですから仕方ありません。その代わりと言ってはなんなのですが、江ノ島に憑りついている化け物を退治してください。それができたら10ポイントに戻します」 「でも、争いごとはダメなんじゃないの?」 「いいえ、江ノ島は管轄外ですし、弁天様もお喜びになります。神田明神グループの評判も良くなるでしょうし」 「え? わたしって神田明神グループなの!?」 「ケルベロス、いえ、綾香さんにはお伝えしてありますが」 「もう、仕方ないなあ」  かくして、江ノ島の化け物退治に出向することになってしまった魔法少女マヂカなのであった。
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