030『真横で声がした』

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030『真横で声がした』

魔法少女マヂカ・030   『真横で声がした』語り手:マヂカ     大塚駅のホームで友里と分かれる。  恥ずかしそうに「お母さんと池袋いくんだ」と呟く。笑いそうになる。 「プ、それなら、降りちゃダメじゃん」  友里は、いつものように電車を降りてしまったいるのだ。 「え、あ……うん。次の電車に乗るから」 「そうか、じゃ、ここで」 「うん、また明日」 「じゃね」  真っ赤な顔して恥ずかしそうに返事。まるで恋愛真っ最中の女の子だ。  まあ、それだけお母さんとうまくいっているということなんだ。うまくいっていることが照れくさいんだ。  ちょっと冷やかしてやりたくなったけど、こそばゆそうにウィンク一つしてエスカレーターに向かう。  都電沿いの坂道を大塚台公園の緑を仰ぎながら上る。  都電の軌道を含んでる分道幅は皇居前かとくらいに広いんだけど、交通量が少なく、道沿いには昭和の雰囲気満載の商店や会社、喫茶店、神社。タイミングよく都電がゴトンゴトンと走ったりすると、とても雰囲気だ。  不可抗力で住み始めた東池袋だけど、これは当たりだと思う。  走ったら間に合うタイミングで信号が赤。  公園の西北角交差点に佇む。  日も長くなった、このまま散歩しようかなあと思う。  その気になれば、一瞬で私服になることもできるけど、いったん家に帰って着替えるのもいい。そういうアナログな行動が楽しいかもしれない。なんの予備情報も持たずに夕方まで街をぶらぶら。素敵で贅沢な時間になるぞ。  ガラにもなくウキウキして、信号が青になるのが待ち遠しくなってきた。 「だったら、ちょっと付き合ってくれませんか」  真横で声がした。  サラリーマン風がいつの間にか横に立って、視界の隅で私を捉えている。  フラリと力はぬいているが、どこにも隙が無い。おそらく人間なのだろうが、特殊な能力を持っている。うかつな対応はできない。 「驚かしたのなら申し訳ない。わたしは特務師団の者です」  !?  そいつは、七十四年前に縁の切れた組織の名前を口にした……。
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