033『自衛隊めし・1』

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033『自衛隊めし・1』

魔法少女マヂカ・033   『自衛隊めし・1』語り手:安倍晴美     調理研の四人を乗せて246号線を西に向かっている。  学校では三時間目の授業が始まろうという時間に、教師と生徒四人、ほとんど遠足気分でドライブしているのには訳がある。  雑誌の編集を生業にしている友人が泣きを入れてきたのだ。 ――ポリ高に調理研あったよね!?――  うん、あるよ。  気軽に返事すると――生徒貸して!――と頼まれてしまった。  雑誌の企画で、自衛隊メシを女子高生が試食しまくるというのをやるんだって。  丸の内高校の調理研を予定していたのが、季節がらか部員全員が食中毒になってキャンセルしてきたのだ。ネットで調べまくると日暮里高校にも調理研があるのを発見! それで、同窓のよしみであたしに言ってきたのが、昨日の今頃。  それで、顧問に頼むと、あっさりOK。  ただ、条件が一個あって、いっそ調理研の正顧問をやること。  で、正顧問最初の仕事が四人の公欠をとって一時間目終了と同時に車で学校を出たというわけよ。  グ~~~~  後部座席から陽気な音がした。 「だ~~~~れだ?」 「す、すみませ~ん(^_^;)」  顔を真っ赤にして応えたのは、調理研一番のお子ちゃまノンコこと野々村典子だ。 「さては朝ごはん抜いてきたなあ~」 「ぬ、抜いてませ~ん! トースト一枚にしただけです!」 「ハハ、タダ飯だと思って、食べる気まんまんなんだ!」 「ち、ちがいます!」  ムキになるノンコに車内は爆笑だ。 「友里んとこは、お母さん残念がってなかったか?」 「あ、そうなんです、よく分かりましたね!?」 「マヨネーズエッグ、職員室でも評判だったもんね、友里のお弁当作るの生き甲斐なんだろ、お母さん」  友里の両親はコブ付きで再婚したばかり。お弁当が縁で、やっと近ごろ親子らしくなったんだ。このくらいの冷やかしで応援してやるのがいい。 「取材協力費なんて出るんですかね?」  ちゃっかりしているのは藤本清美だ。根はとっつきの悪い優等生なんだけど、友里つながりで調理研のメンバーになって砕けてきた。 「いくらかは出ると思うけど、なんで?」 「たまには、ゴージャスな食材でパーっとやってみたいじゃないですか! あ、むろん安倍先生もいっしょに!」 「おー、いいねえ。食い物はアテ程度でいいから、お酒のいいやつを……」 「授業の一環です、アルコールはNGです!」 「それはキビシイ~」 「先生、バックミラーアアアアアアアアアアア!」  友里が叫んだ。 「な、なんだ!?」  バックミラーには、猛スピードで軽ワゴンが、あちこちの車にぶつかりながら突っ込んでくるのが映っている! 「ヤバい、暴走車だ!」  二秒足らずで通過するか衝突するか! 「みんな、体丸めろ!」  そう言うのが精いっぱい。ハンドルを左に切るが、おそらく間に合わない!  ぶつかる!!  キキキキーーーーーーーーー!!!  次の瞬間、悲鳴のようなブレーキ音をさせ、わが愛車の直ぐ後ろで暴走車は停止した。  運転席には八十過ぎくらいのクソババアが目をまん丸くしてたまげている。  この顔は、自分でブレーキを踏んだ顔ではない。 「おまえが、やったのか?」  小さく呟くと「え、なんのことですか?」とオトボケ。  こいつが一番の問題児、渡辺真智香。  ほんとは魔法少女マヂカという。ひょんなことで素性を知ってしまったんだが、ケルベロスって双頭の黒犬に口止めされていたりするんだ。  クラッシュしていないので、ゆっくりアクセルを踏み込む。  目標の練馬駐屯地は目と鼻の先だ。
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