勇者の行進

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 大切なお前達を傷つけるわけがない――。  そう浩一は言ったが、もはやそれを信じる根拠はどこにもなかった。  浩一は、いざとなったら絶対にやる。そしてきっと、やってしまったあとに、こんなはずじゃなかったと泣き崩れるのだ。   家族を人質に取られた麻美は、籠の中の鳥だった。  浩一は、あれを境に精神的に不安定になり、暴言を吐いては酒を飲んで泣き、その翌日にはゾッとするほどの猫なで声で麻美の機嫌取りをする。それを、何度も何度も繰り返すようになった。この不安定ぶりには、麻美もほとほと参ってしまい、精神をすり減らす日々が続いた。  さらに悪いことに、浩一は休日に麻美が一人で買い物に行くことすら許さなくなった。元から麻美がママ友や友人と出かけることを良くは思っていなかったが、ちょっと近所へ用事を済ませにいくのにも、浩一がついてくるようになった。浩一の休日は、少しも心身が休まらない。平日も、暇を見つけては職場から電話をかけてきて、少しでも麻美の応答が遅れれば、どこへ行っていたと責める。鳥かごのインコですら、もう少しマシな境遇だ。浩一の執着は、異常だった。  それでも、麻美はどこにも行くことができない。  逃げることもできない、助けを求めることもできない。じゃあ、この地獄から逃れるにはどうしたらいい――?      
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