15人が本棚に入れています
本棚に追加
麻美は、自分は絶対的にツイていないタイプの人間だと思っている。
先ほどのストローに、もし毒が塗られていたら。一本だけ不自然に飛び出していたのは、誰かが無作為に殺人を犯そうとしていたのではないだろうか。電車でなぜか一つだけポツンと空いている座席、バンジージャンプ、挙句の果てに飛行機。何もかも、自分を陥れるための罠に見えて仕方ないのだ。他の大勢の人に何も起こらなくても、自分にだけは、何万分の1という確率すらすり抜けて、悪いことが起きてしまう。
おかしな思い込みだということは麻美自身も分かっていた。ただの被害妄想だし、実際、やむにやまれず飛行機に乗ったことが数回あるが、一度も何かが起こったことなどない。
しかし、ツイていない人間だということだけは、確信をもって言える。
あんな男に出会って、結婚までしてしまったのだから。
最初のコメントを投稿しよう!