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〜prologue〜
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なんともお洒落なマンションの一室、都会の煌めく夜景をバックに、やけに整った甘い容貌の男が、私のことを冷たい眼差しで見下ろしている。
別に、逃げようと思えばいつでも逃げられるというのに……。
その冷たい眼差しに、全てを囚われてしまっているかのように、私は、動くことも、眼をそらすことさえままならない。
そのことを分かっているかのように、その男は、焦らすようにして、こちらへゆっくりと近づいてきて。
無防備な私の顎先に指先を添え、掬い上げるようにして上向かせると、
「いいですねぇ……? あなたのような気の強い女性の、その反抗的な眼差し。ゾクゾクします」
怖いくらいに綺麗な恍惚とした表情を浮かべて、なんとも不可解なことを言ってくる。
凍てつくように冷たかった筈の瞳には、いつしか燃え立つような情欲の熱を宿していて。
その怪しく煌めく瞳に見つめられただけで、ゾクゾクと身体が粟立ってゆくから堪らない。
「ちょ……ちょっと、なんなんですかっ! 大きな声出しますよっ!」
そんなこと言ったところで、この男を悦ばせるだけだというのに……。
そんなことしか言えない私を小バカにでもするかのように、その男は厭らしく片方だけ口角を吊り上げフッと一笑すると、
「無駄だとは思いますが。まぁ、いいでしょう。出せるものなら出してみてください。さぁ」
挑発するように、そういってくるや否や、私の無防備な首筋をグイと掴んで尚も上向かせる。
それが苦しくて、大声なんて出すこともできずに、苦悶の声を漏らしてしまった私の柔らかな唇は、
「……ぅっ……んん――ッ」
そらみたことかとでも言うように、フッと冷たい笑みを零した男によって、すべてを奪い尽くすようにして、乱暴に噛みつくように口づけられてしまった。
優しさも、息をつかせるような余裕さえも与えてもらえない、愛情の欠片もない冷たいキス。
それなのに、気づけば、囚われ、甘く淫らに翻弄されて、もう逃げられない。
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