幻の王子様の正体 〜side隼〜

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 けれど、少なくとも、こういう時に僕を必要としてくれるくらいには、好きになってくれているのだと思うと、それが嬉しくて堪らなかった。  --こんな時にそんな不謹慎なことを思ってしまって、申し訳ないという気持ちと。これからは、もう何があっても、こんな目には二度と遭わせたりしない。僕が守って見せる。  ヒックヒックとしゃくりながら、僕の腕の中で子供みたいに泣きじゃくる侑李さんの小刻みに震え続ける身体をぎゅうと尚も強く掻き抱いた僕は、心の中で誓いを立てていた。  その日は、侑李さんと同じ女性である櫻井さんの気遣いで、被害者である侑李さんへの事情聴取は日を改めてということになり、僕は自分のマンションへと侑李さんのことを連れ帰ることになって。  マンションに帰ってからも、侑李さんは相当怖かったようで、しばらく泣いてはいたが、そのうち泣き疲れてしまったのか、僕の腕の中で、全てを僕に委ねるようにして眠りに誘われていった。  そんな侑李さんの様子にホッとした僕も、いつしか寝入ってしまっていたが、夢の中でも忌々しい記憶に苦しめられているのか、侑李さんは時折うなされていたようだった。
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