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プロローグ
───白く、何処までも続く不可思議な世界。
辛うじて微かに輪郭を掴めるお陰で、平衡感覚を失わずに居られ
る白亜の世界。
空は何処までも白く輝き、地面も同様に白い大地が何処までも伸
びている。
しかし。その白い大地は何か強い力で抉れ、辺りには抉り引き剥
がされた様子の白い岩石が点在して居た。
「ッ!」
そんな岩石の間を駆ける誰か。
スーツの袖を腕まくりし、何故か腕にネコを抱いて走っている青
年。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
彼は岩石の一つへ背を預け“ずるずる”と腰を下ろし座り込む。
そしてがっくりと頭を下ろしては。
「クソ……。」
絞り出すかのように言葉を小さく呟く。その呟きを聞いたからな
のか、或い全くの偶然か。
『にゃーん。』
彼が抱くネコが一つ鳴いてみせた。
青年が一つ身震いをしては、項垂れた頭をゆっくりと持ち上げ、
白い空を仰ぎ。
「どうしてこんな事になっちゃたかなぁー。」
呟いた青年の頭上。青い魔法陣が怪しくも瞬き。
白亜の世界に轟音が響き渡る───
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