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「えっ!!社長…が会長に?」
「そうなりますねぇ。」
それは突然、いつもと変わらない朝に社長から聞かされた。
「親バカですけど、心配なんですよ。」
結城社長は息子の結城 冬夜 26歳に社長職を継がせるつもりらしい。
いち社員に反対意見など言える訳もない。
「……会長になられてサポートをされるおつもりですか?」
「うん。まぁ、暫くは様子を黙って見るつもりだ。どの程度出来るか…一応、子会社で修行はさせて来たしね。」
「分かりました。」
(それなら就任までのスケジュール管理と就任後の部屋のお引っ越しかな?忙しくなる。)
と考えていると社長の口からとんでもない言葉が出る。
「息子の事、よろしく頼むね?助けてやって欲しい。」
「…………………は?」
「ん?だから、助けてやってね?」
「………それは、お力になれる事でしたら。」
「うん、君なら大丈夫!安心して息子を頼めるよ。」
(……話が…見えない。)
「あの……一体何のお話……。」
分からない表情を向けると社長も不思議顔で言う。
「あれ?秘書課から書面来てない?会長になったら、君にはこのまま社長秘書として残ってもらって、息子のサポートをお願いしたい。」
「えっ!?」
予想以上に大きな声を出した。
「嫌?」
尊敬する社長に聞かれて嫌と言える訳もない……まして社長のご子息を嫌と言えない。
「いいえ、社長と離れるのが寂しくて…一緒に異動だとばかり思っておりましたので…。」
と、差し障りなく答える。
「嬉しい事を言ってくれますねぇ。黒田さんにはお世話になりました。信じられる素晴らしい秘書です。だからこそ、息子の足りない所をどうか助けてやって欲しい。よろしくお願いします。」
社長に頭を下げられて、嫌ですとも言えなくなった。
結城敬社長には二人のお子様がいる。
跡継ぎとなる結城冬夜は仕事は出来ると聞いているが女性関係は派手だという噂だった。
(人として尊敬できそうも無い…そんな人に仕えるの?)
これから先の仕事が憂鬱になっていた。
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