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「寂しいけど…楽しみかな?」
お腹を撫でながら冬夜は静の顔を見た。
「楽しみだけど、もう、なんなの?早過ぎでしょ?」
「お!出た!静の文句。」
楽しそうに笑い、冬夜は静を見つめる。
妊娠が分かってから、同じ事を静は繰り返して言っていた。
納得がいかないのだ。
「おかしいでしょ?普通はさ、お付き合いも数年?してさ、同棲とか?社内恋愛とか、一緒に帰ったりして、それから結婚式で、準備も二人で苦労して、一緒に暮らす準備して、2年くらい二人で…私、お付き合いから2週間で結婚の話になって、半年で妊娠して、その3ヶ月後に結婚式で、早い!早過ぎる!」
「俺には遅い位だよ?もっと早く結婚したかったし、付き合いたかった。それとも嫌?今の状況は…。」
聞かれて静は頬を膨らます。
「嫌だとは言ってないでしょ?」
夏の休暇を使い、冬夜は単身用のマンションを引き払い、静の実家に引っ越した。
子供も産まれたら大変だと考えて、お店の手伝いにも行きたいと静が言うので、そのまま住まわせてもらう事にした。
数年したら、子供を連れて結城家に引っ越す予定だ。
今は夫婦で一緒に通勤している。
冬夜は静を離さずに側に置いているから、愛妻家と言われ始めた。
父親の敬と同じ道を歩んでいると言える。
ソファから立ち上がり、机に向かって歩いて行く。
(仕事する気になったかな?)
と考えて、静もゆっくりとソファから立ち上がる。
「綺麗だったよなぁ〜。結婚式の静!招待客も見惚れてたしさ、あと、静の親戚!驚いたよなぁ。みんな顔が似てて、しかも美形揃い!あのテーブルは華やかだったよな。」
(また、そこかい!)
ちょっとガックリとして、振り返ると、机の上に並べられた写真立てを見つめる冬夜がいた。
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