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社長専用車に乗り込んで、不機嫌な顔で結城冬夜は窓の外を眺めていた。
(親父のスケジュール管理はしてたんだろ?何で俺の管理はしない?昼飯も一緒に食えないし、気が付くとどっかに逃げる。何で逃げるんだ?ドアに打つけたからか?そもそも…黒田さんは俺のこと覚えているのか?)
「ちっ!そこから確認すんのか…。」
思わず声に出して言う。
「社長?どうかされましたか?」
運転手の間部にバックミラーをチラリと見て聞かれた。
「いや…大丈夫だ、何でもない。」
(前もそうだった…話そうと考えているといないんだ。人事課に昼食に誘おうと思って行ってもいないし、合同の飲み会があるって聞いて参加してもいない。転勤になってから本社来る度に探すのにいない。もう…運命が邪魔しているとしか思えないんだが…いや……!)
「運命など信じない!」
突然、大きな声を出した社長に間部は驚いて声を上げた。
「わっ!しゃ、社長!どうされました?」
「…悪い。驚かせた。大丈夫だ…。気にするな。」
間部孝康38歳。既婚、2人の子持ち。
彼も静と同じく、前社長より指名され運転手として残された一人だった。
前社長には恩義もあり、息子である冬夜の事も良く知っていた。
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