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「いや…いやいや……それより重要でしょ?何、話題変えようとしてるの?おっきい声出しちゃうよ?」
こちらも出来れば意味不明な久我の事など話したくないし、すっごい気になる話の続きを聞きたいから、怯む事なく脅しにかかる。
「だからぁ…言っただけなの!思わず、ぽろりと…。」
仕方なく情けない顔で郁が白状する。
「ぽろりと?好きですって?その後は?塩川さんはなんて?」
「んー?送ってもらう途中だったし…すみません間違いです、って謝って逃げた。」
箸でつまんだ唐揚げをボトッとお弁当箱の中に落とした。
「はぁ?何で間違いですとかいう……ふぐっ…。」
(2回目は流石に早かったな……。)
「ハウス!しず、ハウスだよ?」
と言われてコクコクと頷いた。
(……犬?)
「もう…。静は自分の事棚上げなんだからぁ。考えても見てよ!あの!塩川さんだよ?あの顔で見られてさ、恐れ多い!肌とかちょー綺麗だった。すべすべそうだった!もう、女子力で負けてるし、絶対!無理!」
言われてみれば…と静はタクシーの中での隣にいた冬夜社長を思い出した。
(すべすべ…確かに…。目の前で見たら謝りたくなる顔かもね?)
「女の30と男の30じゃあ…脂のノリが違うのかしらね?」
ポツリと言うと、郁も同意する。
「響きがまず違うじゃない?男の30ってまだ若いこれから!って感じでさ、女の30ておわた!みたいに聞こえる。」
「あぁ…確かに。あの二人組もそんなこと言ってた。27、8なら売り出しでしょって。地味な服着てないでみたいな事?」
もう一度唐揚げを掴んで口に放り込んだ。
「そんなこと言ったの?最低だな!まぁ、でも言われるよね?似たような事は言われてる。そろそろ結婚?とかぁ?もう決めないと子供産めないよとか?」
「大きなお世話だ!頼まれても断る…て言えばいいんじゃない?」
「……静は、相変わらず毒舌だなぁ。」
「心の中で言う分には自由でしょ?」
郁に笑顔を向けて、静はお弁当箱を閉めた。
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