思い出は…。

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社内への顔見せも社外への挨拶も終わった就任二週間後、冬夜社長デビューとも言える大きな仕事が入っていた。 社長自ら立ち上げたプロジェクトでメンバーも社長が直々に各部署から選んだと聞いていた。 大手化粧品メーカーと共同開発をしたオールインワンジェルと口紅。 CM制作、ポスター、メディア向けの制作発表などをこれから行う為、プロジェクトメンバーが一同に集まり初会議となっていた。 「いってらっしゃいませ。」 秘書室のドアの前でドアを開けた状態で頭を下げて、社長が通るのを待っていた。 足元に見える革靴が静の前で停止した。 「何してる?」 低い声が今日も響く。 「え?お見送り…ですが?」 キョトンとして少し顔を上げて答えた。 「お前も来るんだよ!」 「は?新しいプロジェクトですよね?初顔合わせ……と聞いておりますが?」 「だからぁ〜!お前も来るんだよ!俺の秘書兼メンバーとして選出した。女性の意見も欲しいからな。」 「は?いや…いやいやいや…。」 「嫌?……そんな偉そうに言える立場だと思ってんのかぁ?」 ギロッと睨まれた。 「おも、思ってませんが、その嫌ではなくて、いやいや、無理ですよ?のいやです!」 手を顔の前で振りながら答えた。 「いやいや無理ですよ?のいや?アホか!無理な訳あるか!」 顔の前で振っていた手を捕まれた。 「無理ですよ!そんな社長肝いりのプロジェクトに…どぉして…いちぃ…秘書…が!!」 抵抗しながら、手を振り解いた。 はぁはぁと肩で息をしながら社長を見ると、社長も振り解かれた手を呆然と見ながら静の顔をギロリと睨んだ。 (ひ、ひぃ…鬼…鬼がいますぅ。) 体を引いて次の攻撃に備えた。
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